最終バス
星空に手が届きそうな バス停あたりで
ポケットの中の辞書を強く握りしめている。
僕は、英雄達の残した言葉を心の中で
何度も、何度も繰り返す。
飛行機の赤いサインだけ 星屑を縫って
オリオン座の近くを横切って消えていく。
僕は、すぐそばにある幸せの意味を知った。
僕は、粒子のような ちっぽけな存在だけど
僕は、水曜日生まれで悲しみいっぱいだけれど
今夜は、声にならないメッセージを送りたい。
あの人に会いたい。みんな元気ならうれしいな。
今は会えない友達だって、明日を見失わなければ
いずれ笑顔で再会できる。その日を待っている。
あの人に会いたい。記憶の中の昔に戻りたい。
お星さまになった愛おしい、みんなに会えるなら
僕は、銀河鉄道の改札口を探し出してみせる。
星空に手が届きそうな バス停あたりで
ジャケットの袖には、腕時計が月のように輝いている。
街灯の明かりを頼りに、時刻を確認する。
そろそろ「最終バス」が到着する。
赤いライトの最終バスに乗ると、僕の介護元年の
1年が終わる。
それでも、このまま僕が笑顔で過ごしていければ、
来年こそは、いいことあるかな。
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