給水塔の見える部屋
隅田川が、荒川だった頃より変わることのない
美しい川の湾曲。天狗の鼻のやや下流域の団地。
高度成長期には、若い夫婦の憧れのアパートメント。
窓からの眺めは、ほんの少しだけ見える川と処理場と
細長い円柱の上にUFOが乗ってるような給水塔。
何処にでもあるようでも、他では見ることのない景色。
給水塔が見える部屋。いつでも、とっても賑やかだった。
泣いたり、笑ったり、眠ったり、ケンカもしていた。
給水塔の見える窓辺。青空も夕焼け空も似合っていた。
隅田川の向こう側の島。小台橋で渡る島。豊島橋で渡る島。
荒川のこっち側の島。東京23区の偉大なる陸の孤島。
高度成長期からずいぶんたって、時代や年号が変わっても、
変わらないでほしいことがある。
給水塔の見える窓辺より、団地の裏庭を見下ろすと
春夏秋冬、四季の移ろいの香りを感じることができる。
桜が咲いた。七夕がある。御神輿も、雪合戦も見える。
給水塔が似合う部屋。川風の気持ちいい部屋。
給水塔と暮らす部屋。好きだから嫌いにもなったけど、
幸せな時間も大切な想い出も、溢れるほど詰め込んである。
これからも、UFOが、いつまでも見守っていてくれる部屋。
これからは、UFO越しにこの部屋を眺めることになるのかな。
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