雨の金曜日

目が覚める前から　分かっていた。

かなりの大雨になることを　何故って僕は、

雨が嫌いなわけではないからです。

雨が降って　嘘は洗い流される。

雨が止んで　町は月に輝きだす。

雨の日に映画館に行くことは　好きかもしれない。

スーツを着て　革靴を履いて　傘を差す。

雨に霞む街かどで　待ち合わせをする。

映画館の入口辺りで傘を畳む。君も雨に濡れた傘をたたむ。

僕は君の襟元の雨の雫に気づくいて、見惚れている。

君は僕の濡れた肩の雨をハンカチーフで、そっと気を使っている。

映画を見終わり、雨の止みそうなネオン輝く町に出る。

ふたりの傘の先が触れ　おたがいが手を取り合いたくなる。

月は見えなくてよい。映画の話しだけしていればよい。

霧雨が似合う絵画のような交差点。信号を待つ微笑を交わす。

人の流れに　彷徨うな　ふたりのための大人のデート。

雨の降る夜の映画館からの帰り道。傘を差して駅へと向かう。

とても、大切で特別な甘すぎる　ふたりの想い出。

君は雨が降ると　雨靴を履いて　水たまりを跳ねている。

僕は君のはしゃいでいるシルエットを見つめている。

今夜も僕は　雨の中を僕のために頑張って帰って来る君の姿を

店内の窓から待っている。アールグレイを用意しておこうか。

ふたりで観た映画のワンシーン。強い雨の中でのキスシーン。

雨の中で抱き合う若き日のふたり。年老いても愛の深さをしる。

ラストシーンは　現実の裂け目のような奇跡なのに　切ないほど

美しい大人の口づけ。だから　雨の日は　嫌いになれない。