波の音が聞こえる

小さいころの思い出。波打ち際で拾った巻貝を

耳に近けてみると「波の音が聞こえる」と信じていた。

今になって思えば、空気の音なのかと思ったりするけど

「心地よい音」だなと感心している。

ここ最近のこと。店の前に、白くて小さな巻貝が落ちていた。

僕たちは「どこから来たのかな。訪ねて来たのかな。」と

笑いながら、シンクで丁寧に洗っていた。

この迷子の巻貝を耳にあてると、波の音は聞こえなかったけど

懐かしい言葉を思い出した。それは、20年くらい前の出来事。

熱海の南明ホテルの夜のこと。窓際に佇むシルエットから

「波の音は聞こえてくるけど、潮の香りは届いてこないな。」

僕は、この短いけど、なんともロマンチックな台詞に心打たれた。

僕は、こんな名台詞、浮かんでこないや。やるね！おやじさん！