雅さと 奥ゆかしさ
八月十一日 金曜日。山の日であり旗日である。
いつまで、続くのか酷暑の日々。
日本の夏は、何処に行ってしまったのか?
そんな、ため息をつく昼下がりのこと。
郵便受けに、良子様宛てに封筒が届いていた。
手書きの宛名から日本人の忘れている優しさが浮かぶ。
祖父は、漢文を熟知していたようなので「字・書」で、
生計を立てていた。
字は心を表す。字は人柄を表す。丁寧な中に可愛らしさが
感じられる。心のこもった字。
封筒の中から「暑中お見舞い 申し上げます。」の一文。
基本となる例文が、痛み入る。
立体的な屛風絵は、京都の夜景を金色で煌びやかに表して、
花火が打ちあがっている。五重の塔と川と屋形船。
二十年前、八月の京都を訪れた。とても暑い日だった。
この時期の記憶だけは曖昧ではあるが、東寺辺りの画廊か
ギャラリーに展示されている自分の作品を見に行くために、
ふたりで、京都を訪れていた。
夜になって、川床を味わった。
京都は、目で見える「涼」に優れていると感心をしていた。
そして、今夜も、風鈴の音もしない熱帯夜のようだ。
カウンターの上に飾った「雅な屛風絵」を眺める。
心なしか、夏の夜風を感じている。
きっと、この風は、九州の方から送られてきているようだ。
0コメント